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中川泰伸

「英国総督最後の家」

更新日:2019年3月13日


 インドとパキスタンの紛争が続いています。


イギリスから一緒に独立した両国。領土も飛び地で重なっています。

パキスタンはイスラム色が強く、インドは宗教の坩堝で、当然イスラム教徒も大勢います。

一体この二国の何が違うのか? どうして仲が悪いのか。日本人には分かりにくい。

映画でもそこに触れた作品は少なかった。

しかし最近、イギリスからの独立の歴史ドラマも作られるようになりました。


中でもリアルだった作品が、2018年 8月に公開された映画「英国総督 最後の家」。

インド独立を扱った娯楽作。


ジャンル的にはオーソドックスな恋愛歴史ドラマ。日本の東宝や東映が手がけそうな、家族で見れる普通の娯楽作。

ただこの作品を取り上げたのは、独立の経緯の認識が、これまで一般的に流布しているインド建国のイメージと違い、現実的だからです。


描かれているのは1947年のインドの独立。

インド独立のストーリーの世界的スタンダードは、リチャード・アッテンボロー監督の映画「ガンジー」といわれているそうです。 https://www.youtube.com/watch?v=NPZ2kOndKfg

どういうものかというと、 ・ガンジーというカリスマ指導者が存在し、

・精神性に啓蒙されたインド民衆たちが目覚め、 ・イギリスの抑圧支配からの闘争を経て、 ・ガンジーの聖なる精神の庇護の下、 ・インドはイギリスからの独立を勝ち取る!(結果的にはインドとパキスタンに2分割される)

尊い神話のようですね。 インド独立に対する、私達のイメージとも重なります。


でもそれがインド独立の真の姿なのか? というのが「英国総督 最後の家」のスタンス。

原案と言ってもいい原作もあるようです。

本作主人公マウント・バッテン卿の個人秘書を勤めていたナレーンダル・スィンフの「The Shadow of the Great Game」。

女性監督のグリンダ・チャーダも、夫で脚本のポール・マエダ・バージェスも「The Shadow of the Great Game」の影響を語っており、ほぼ元ネタでしょう。

ちなみに、劇中でマウント・バッテンの個人秘書役を演じるのは、原作者ナレーンダル・スィンフの実の息子です。


では原作で描かれたインド独立前と独立時の実際の様子はどうだったのでしょう? ・当時の現実のインドは、ガンジーがいくら唱えても同胞意識はそれほど芽生えない。 ・独立が始まると、数年前のEUのように大量の難民大移動が起き、民族間ではおぞましい内乱の嵐が吹き荒れた。

・虐殺、強姦、略奪。ISみたいにリアルにヤバいのが暗躍。 表沙汰になってこなかった歴史の、赤裸々な側面を描き切りはしませんが、触れようとしています。 今までの映画では作られなかった歴史解釈。

監督のグリンダ・チャーダは、インド独立で実際に難民になった家系の人だそうです。

熱が入るのも当然で、制作にも数年かけたとか。

演出の端々に、綺麗事で済む訳ないじゃん! とでもいうシーンが顔を出します。

恨みなのかもしれない。イギリス高官をインドの従業員に殴らせるシーン など入れたり。


そもそも当時のインドのリアルな政治に、ガンジーの影響力って本当はどれくらいあったのでしょうか? で、本作を見ると・・・、 当時のインド占領国イギリスのボスは、色々言われてるチャーチル。 「えっ、これで独立?」という感じでした。

終盤に出てくる解釈では、独立時に頑張ってインドとパキスタンに二分化しないよう働きかける人々の苦労を横目に、分裂して独立させることは最初に決まっていたようで驚きです。 チャーチルが仕組んだという解釈。ひどいなと思いながらも、我が日本の終戦後を考えると腑に落ちてしまうところもありました。





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